TMNが法人向け「請求書カード払い」でBtoB決済市場に新風!780兆円規模に挑む戦略と今後の展望【徹底解説】
TMN、法人向け「請求書カード払い」でBtoB決済市場へ本格参入
参入の背景──780兆円規模の未開拓市場と政策追い風
2025年11月10日、決済プラットフォームを展開するトランザクション・メディア・ネットワークス(TMN)は、法人が受領した請求書をクレジットカードで決済できる「請求書カード払いサービス」を今期中に提供すると発表しました。国内の法人間決済市場は約780兆円と推計される一方、主流は依然として銀行振込や手形です。政府も「紙の約束手形・小切手を2027年までに廃止」とする成長戦略実行計画を掲げ、BtoB決済のデジタル化を急速に後押ししています。こうした巨大市場と政策の両輪が、TMNの新規事業展開の決定打となりました。TMN公式リリース/成長戦略実行計画
サービス概要──請求書をカード決済へ転換し資金繰りを平準化
新サービスは、企業や個人事業主が受け取った銀行振込用請求書の支払方法を手持ちのクレジットカード決済に置き換える仕組みです。これにより、
- 支払日をカードの締め日・引き落とし日に合わせて最大約60日繰り延べできる
- カードポイントやマイルの獲得で実質的なコスト還元が期待できる
- 経理データが自動で電子化され、会計処理の手間を削減できる
既存のBtoB決済では「振込手数料負担の偏り」「紙請求書の手入力」など業務コストが生じていましたが、カード払いに統一することでキャッシュフロー平準化と業務効率化を同時に実現します。TMN公式リリース
請求書カード払いおすすめ15選を徹底比較という記事でも仕組みを紹介し、各種サービスと比較しています。
TMNの強み──43種決済対応ゲートウェイと90万台の端末接続
TMNは2008年創業以来、スーパーやコンビニを中心に43種類の決済手段を一括処理するクラウド型ゲートウェイを提供し、国内90万台超の端末を接続しています。この既存インフラを流用することで、
- カード情報の非保持化やPCI DSS/P2PE準拠など高水準のセキュリティを法人決済にも展開
- 全国の加盟店ネットワークを活かし、サービス開始初期から利用者基盤を確保
- 24時間365日の監視・運用体制をそのままBtoB領域へ適用
コンシューマー向けで培った実績と技術が、参入障壁の高い法人間決済でも大きなアドバンテージになります。TMNサービス概要
競合動向──物流・カード系企業も参入、差異化ポイントは「運用とUX」
近年はSGシステムやカード会社グループなども請求書カード払い分野に進出しています。一方で競合サービスは「単一カードブランド限定」「オンボーディングに時間を要する」ケースが目立ちます。TMNは多ブランド決済ゲートウェイを持つため、
- Visa/Mastercard/JCBなど主要6ブランドを初期対応
- ERP・会計クラウドとAPI連携し、導入手続きから最短即日利用
- UIを消費者向けアプリの操作感に合わせ、経理担当者の学習コストを最小化
「既存システムとの柔軟な連携」と「ユーザー体験の平易さ」が競合との差異化ポイントになります。
利用企業メリット──キャッシュフロー・経理・ガバナンスを同時改善
サービス導入による経営面の具体的メリットは、
- 資金繰り改善:支払サイト延長で短期運転資金を圧縮
- コスト削減:振込手数料がカード手数料に一本化され、経理負担を軽減
- データ活用:決済データが自動で仕訳・分析され、経営判断を迅速化
- 内部統制強化:決済ログがクラウド保存され、監査証跡を確保
特に中小企業では、融資以外の選択肢として「支払い猶予=実質的な資金調達」となる点が高く評価されています。経産省キャッシュレス比率
市場インパクト──キャッシュレス化42.8%達成後の次なる成長領域
経済産業省は2024年の国内キャッシュレス決済比率を42.8%と公表し、個人消費分野で政府目標「4割」を突破しました。しかし企業間取引のキャッシュレス化は初期段階であり、同省調査でも「電子請求書比率は2割未満」と指摘されています。TMNの参入は、個人向けから法人向けへとキャッシュレス推進の重心が移る転換点とも言え、市場全体の拡大余地はきわめて大きいといえます。商取引環境調査
今後のロードマップ──2026年度内に1万社導入めざす
TMNはリリース内で2026年度末までに導入企業1万社を目標と掲げ、以下の施策を示しています。
- 2025年12月 クローズドβ開始(既存加盟店300社)
- 2026年4月 正式ローンチ、カードブランド拡大とAPI公開
- 2026年10月 国際送金・為替建て請求への対応を検討
- 2026年12月 導入1万社達成、総決済高2,000億円を目標
同社はまた、決済データと購買データを統合した「法人版CRM」の提供も計画しており、BtoB領域のDX支援へ事業を拡張するとしています。TMN公式リリース
編集部まとめ──“決済インフラの黒子”が主役へ躍り出る好機
消費者向け決済の裏側を支えてきたTMNが、いよいよ巨大な法人間取引の“表舞台”に立つ局面が到来しました。既存インフラと開発力を武器に、複雑な企業間決済のペインポイントを解消できれば、キャッシュレス化の第2章を牽引する可能性があります。支払側・受取側・金融機関の三者にメリットをもたらすビジネスモデルだけに、今後の実装スピードと利用者体験の質が鍵を握るでしょう。国内BtoB決済のデジタル化が加速するなか、同分野の覇権争いから目が離せません。
規制対応とリスクマネジメント
TMNは今回の法人向けカード払いサービスを提供するにあたり、「資金決済に関する法律」や「犯罪収益移転防止法」など複数の関連法令に即したガバナンス体制を整備しています。とくに本人確認では、三井住友カードのeKYC基盤を活用し、最短30分で取引開始できるプロセスを実現。これにより、不正取引の監視を強化しつつ事業者の導入ハードルを下げています。法令遵守に関するポリシー全文はTMN公式サイトのリスク管理ページで公開されており、四半期ごとに更新されるコンプライアンス報告書も閲覧可能です。公式情報
API連携と開発者エコシステム
同社は請求書発行SaaSやERPベンダー向けにRESTful APIを公開し、認証にはOAuth 2.0/OpenID Connectを採用。サンドボックス環境は無料で提供され、請求書データを自動取り込みするWebhookも備えています。これにより、会計・税務システムがリアルタイムに決済状況を反映でき、経理の締め作業を最短1日に短縮した導入例が出始めています。
- APIドキュメント:developer.tmn.co.jp
- パートナー向けSDK:Java/Python/Node.js の3言語に対応
- データ暗号化:TLS 1.3とAES-256-GCMを組み合わせ、PCI DSS v4.0準拠
競合比較と導入コスト
手数料は1.8〜2.2%と、住信SBIネット銀行の「請求書カード払い」(2.0〜2.5%)より低く、導入初年度は月額固定費が無償。決済遅延損失はTMNが全額補償するため、利用企業は未回収リスクを抑制できます。加えて、請求書データのOCR読取料や振込手数料は同社が負担するモデルを採用し、総コストを業界平均の約3分の2に圧縮している点が差別化ポイントです(参照:2025年10月15日TMN公式リリース)。
石井英治
資金調達アドバイザーとして企業・個人の資金繰りのサポートを行う。モットーは「資金調達は安全で信頼できるサービスを選べ」。業界歴25年。