ラボルが32億円を調達――AI審査とカード払いでフリーランス金融を革新する成長戦略を徹底解説

石井英治 ファクタリング
ラボルが32億円調達する背景となるフリーランス金融の革新を象徴する、カフェでモバイル決済をする人物のシーン。

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資金調達の概要

株式会社ラボル(本社:東京都渋谷区、代表取締役CEO:建部大)は2025年9月18日、総額約32億円の資金調達を完了したと発表しました。フリーランス・小規模事業者向けAIクラウドファクタリング「labol」とBtoB決済サービス「labol カード払い」を手がける同社は、資金調達を通じてカード払い機能の高度化とチャレンジャーバンク構想の加速を掲げています。調達の内訳はエクイティ約10億円、金融機関からのデット約22億円で、成長投資と資本効率のバランスを保ちながら拡大を図る姿勢がうかがえます。創業手帳記事 によれば、同社サービスは2023年以降、取扱高と登録事業者数が毎年倍増を続けており、今回の資金はサービストラクションの裏付けにもなっています。なお、ラボルはポイントサイト大手セレス(東証プライム:3696)の子会社であり、親会社の顧客基盤も活かしてスピーディな顧客獲得を実現しています。

調達額とスキーム

今回のシリーズではWMパートナーズをリード投資家、みずほ成長支援第5号投資事業有限責任組合をコ・リード投資家とし、計7社が出資。さらに三井住友銀行・みずほ銀行など複数行からシンジケートローンを組成し、エクイティ/デット比率は約3:7となりました。ハイグローススタートアップながらレバレッジを積極活用し、負債コストを抑えた成長モデルを示している点が特徴です。PR TIMESリリース によると、評価額(Post-Money)は約120億円で前回ラウンド比1.8倍に上ります。

出資・融資の引受先

  • リード投資家:WMパートナーズ株式会社
  • コ・リード:みずほ成長支援第5号投資事業有限責任組合
  • その他出資者:セレス、三菱UFJキャピタル、DGベンチャーズなど計7社
  • 融資金融機関:みずほ銀行、三井住友銀行、あおぞら銀行ほか
  • エクイティ:約10億円/デット:約22億円
  • 資金使途:機能拡充・M&A・AI研究開発・採用基盤強化

「labol カード払い」とは

サービスの仕組み

「labol カード払い」は、カード未加盟店に対して振り込み代行を行い、利用者(発注側)はクレジットカードで最大60日後に支払えるBtoB決済サービスです。ユーザーがWebフォームから請求書PDFをアップロードすると、ラボルが最短60分で取引先に銀行振込を実行し、ユーザーはカード会社の締め・引き落としサイクル分だけ支払いサイトを延長できます。クレジットカード特有のポイント還元も享受できるため、キャッシュマネジメントと実質的なコスト圧縮を同時に実現できる点が評価されています。labolカード払い公式ページ

  • 審査はオンライン完結、24時間365日申込み可
  • 最短60分で取引先に着金
  • 上限500万円までカード枠を活用可能(法人プラン)
  • 支払いサイトは最大60日、カード締め日によって変動
  • Visa/Mastercard/JCB/Amexに対応
  • 振込手数料はラボル負担、ユーザーは利用料+カード会社手数料のみ

ユーザーの実利

フリーランスや小規模法人は、売上入金と仕入・外注費のタイミングがズレる「資金繰りギャップ」に悩みがちです。「labol カード払い」は掛け払いの代替となり、月末資金不足の解消に寄与します。さらにカードポイントの獲得や、経費精算をカード明細で一本化できるため経理負担も軽減。法人カードを持ちにくい創業期スタートアップでも、代表個人カードで即日利用できる柔軟性が支持を集めています。

資金使途と成長戦略

チャレンジャーバンク構想

ラボルは「フリーランス専用チャレンジャーバンク」を掲げ、決済・ファクタリング・与信・税務を一気通貫で提供するプラットフォーム化を狙っています。調達資金の一部は、周辺サービスを持つスタートアップのM&Aや、銀行API連携によるネオバンク機能実装に充てられる予定です。これにより決済データと取引履歴を蓄積し、独自スコアリングで追加融資や保険商品のクロスセルを行うモデルを描いています。ラボル会社概要

AI研究・組織強化

ファクタリング審査エンジンの精度向上を目的に、自然言語処理と画像解析を融合したAIモデルを開発中です。請求書OCR精度は現行99.2%から99.7%へ引き上げる計画で、与信判断の自動化率も90%超を目指します。また、エンジニア・データサイエンティストの採用枠を前年の2倍に拡充し、社内技術ブログ「らぼるてっく。」で採用広報を強化。組織面では執行役員制度を導入し、CxOレイヤーを外部招へいすることで、多角的なガバナンス体制を整備するとしています。

業界動向とラボルのポジション

国内BtoB決済市場は2023年時点で約160兆円、そのうちカード決済比率はわずか4%にとどまります。キャッシュレス政策やインボイス制度に追い風を受け、2028年にはカード比率が10%へ達するとの民間予測もあり、ラボルにはブルーオーシャンが広がっています。競合としてはUPSIDERの「支払い.com」やトランザクション・レンディングの「Paidy B2B」などが挙げられますが、ラボルは①AIファクタリングとのクロスセル、②非加盟店への即時振込、③セレスグループのメディア集客という三位一体の強みで差別化。特にリスク管理モデルは延滞率0.2%台と業界トップクラスを維持しており、今回の資金調達でさらなるシェア拡大が見込まれます。

  • 市場規模:BtoBカード決済は年平均成長率CAGR23%(2023–28)
  • 主要競合:UPSIDER・支払い.com、Paidy B2B、FREENANCE請求書カード払い
  • 差別化要因:AI審査エンジン/グループシナジー/非加盟店対応
  • 課題:与信枠拡大に伴う貸倒リスク、国際ブランドとの関係強化

編集部まとめ

ラボルが調達した32億円は、フリーランス金融の「最後のフロンティア」を開拓するための原資です。エクイティ比率を抑えつつM&AとR&Dに資金を振り向けることで、キャッシュフローを重視する経営哲学が垣間見えます。競合が多いBtoB決済領域にあって、ファクタリングとカード払いを横断する独自のモデルは他社にはない魅力です。今後はチャレンジャーバンク構想の下で、与信・決済・資産運用を一体化した「フリーランス版スーパーアプリ」への進化が期待されます。資金力を得たラボルがどこまでサービス網を広げられるか、業界の注目が集まるでしょう。

ラボルが32億円を調達――AI審査とカード払いでフリーランス金融を革新する成長戦略を徹底解説

記事ライター

石井英治

資金調達アドバイザーとして企業・個人の資金繰りのサポートを行う。モットーは「資金調達は安全で信頼できるサービスを選べ」。業界歴25年。
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