Rampが発表した「Agents for AP」で請求書処理とカード支払いが自律化――経理DXを加速するAIエージェントの全貌

石井英治 法人カード比較

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RampがAIエージェントで請求書処理とカード払いを自動化――米国発FinOpsプラットフォームの革新点

発表概要:10月7日、AP業務が“自律化”へ進化

米国ニューヨークのFinOps企業Rampは2025年10月7日、AIエージェント群「Agents for AP」を正式リリースした。請求書のOCR読み取りだけでなく、勘定科目の自動付与、承認ワークフローの推奨、さらには支払実行までを一気通貫で担う点が特徴だ。従来のBill Pay機能が持つ高速OCRや3クリック承認の利便性をさらに拡張し、社内の経理担当者が行っていた“最後の手作業”までも排除することで「ほぼ100%の自動化」を目指すという。発表はRamp公式ブログで行われ、同日にPR Newswire経由のプレスリリースも配信された。Ramp公式ブログ / プレスリリース

背景:1枚の請求書に2時間――“20億時間”の削減インパクト

Rampによれば、北米企業では平均して1枚の請求書処理に約2時間を要し、年間では推計20億時間超のビジネスリソースが浪費されている。OCRやワークフロー製品が普及しても、「勘定科目はどれか」「社内ルールに合致するか」といった判断作業が残っていたためだ。Agents for APは過去の取引履歴、仕入先契約、承認履歴といった“文脈データ”をAIに統合学習させ、経理担当者が思考していたプロセスを模倣・自律実行する。結果として、従来ツールが「紙からポータルへ」移行しただけだったAP業務を、実質的に人手ゼロで完結させる段階へ引き上げた。Ramp公式ブログ

主な機能:請求書の読取りからカード決済まで一気通貫

  • 自動GLコード付与:AIが行全体を解析し、社内勘定科目やコストセンターを推定・入力。
  • リスク検知と承認推奨:過去の購買契約やPOと突合し、不正・重複をスクリーニング。
  • 支払方法の自動選択:ACH・チェックに加え、Rampカードによる即時決済も提案。
  • 仮想カード発行:単一請求書専用のバーチャルカードを自動生成し、支払後は自動ロック。

これらはすべてBill Payの画面上で完結し、ユーザーは最終確認のみ。特にカード決済では、取引完了後に請求書とカード取引が自動マッチングされるため、仕訳登録も省力化される。Ramp公式サポート

ユーザー体験:クリック回数は“3→0”へ

既存のBill Payは「3クリックで支払完了」を売りにしてきたが、Agents for AP導入後はAIが処理を先行するため、ユーザーは“確認して1クリック承認”だけで済むケースが増える。さらに、エージェントが「承認すべき担当者」「支払期日」「最適な決済手段」を提案するため、担当者は判断負荷から解放される。Ramp CTOのKarim Atiyeh氏は「エージェントが過去の文脈を理解し、経理が下していた判断を再現することで真の自動化が実現した」とコメントしている。プレスリリース

競合との差別化:AIネイティブ設計がもたらす優位性

従来のAP自動化ツールは、OCRで紙帳票をデジタル化し、ルールエンジンでルーティングを自動化する“半自動”レベルにとどまっていた。対してRampは、カード管理・経費精算・購買管理といった複数データソースを統合的に保有する“AIネイティブFinOps”である点が強みだ。社内システムを跨がずに文脈情報をAIへ供給できるため、判断精度と自律性が高い。競合製品にありがちな「設定ルールが増え、かえって運用が煩雑化する」課題も回避できる。PYMNTS記事

会計統合と内部統制:自動仕訳の精度と監査ログ

Agents for APは既存の会計連携APIを通じ、仕訳データをエクスポートする際にAIが付与したGLコードをそのまま出力する。承認フローやAIの判断根拠はイベントログとして保持され、SOXやJ-SOXの監査証跡にも利用可能だ。バーチャルカード決済では、単一請求書とカード取引が1対1で紐付き、照合作業を不要にすることで誤計上リスクを最小化する。Ramp公式ブログ

日本企業への示唆:ペインポイントは共通、導入障壁は低下

日本でも多くの企業が「請求書PDFはデジタル化したが、科目付けと社内承認に時間がかかる」という課題を抱える。Rampは現時点で北米市場中心だが、SaaS調達やクラウドERPが進む日本企業にとっても、同様のAIエージェント型アプローチは大きな参考となる。特に購買データとカード決済を一体運用できるモデルは、日本の経理DXを加速させる可能性が高い。国際会計基準との差異調整や為替管理など、ローカライズ課題をクリアできれば、AIネイティブなAP自律化の波は一気に拡大するだろう。CPA Practice Advisor

まとめ:AIエージェントが切り拓く“支払の未来”

Agents for APの登場は、OCRやRPAでは到達し得なかった「判断まで含めた自動化」を実現し、請求書処理とカード払いの境界を消滅させる。多忙な経理部門は、単調作業から解放され戦略業務へシフトできる。今後は与信管理、税務計算、グローバル決済など周辺領域への拡張も期待され、AIネイティブFinOpsプラットフォーム間の競争は一層激化しそうだ。日本企業としては、自社のデータ統合基盤を整備し、こうしたAIエージェントを受け入れられる体制を早期に構築することが次の競争力になる。

記事ライター

石井英治

資金調達アドバイザーとして企業・個人の資金繰りのサポートを行う。モットーは「資金調達は安全で信頼できるサービスを選べ」。業界歴25年。
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