後発薬再編を加速!アンドファーマ、第三者割当増資で20%株式取得――持田製薬・伊藤忠が参画し供給網強化へ

アンドファーマとは?
アンドファーマ株式会社は、日医工・共和薬品工業・T’sファーマなどを傘下に置く純粋持株会社です。2025年1月設立と歴史は浅いものの、グループ連結売上は国内大手ジェネリック医薬品メーカーに匹敵し、オーソライズドジェネリックやバイオシミラーまで幅広い品揃えを誇ります。同社は「つなぐ力で、安心できる健康社会を。」を掲げ、医薬品の安定供給と品質向上を両立させるサプライチェーン構築を目指しています。企業サイトには、グループ各社との連携体制や事業ビジョンが詳しく示されています。
設立の背景には、相次ぐ品質不正問題で揺らいだジェネリック業界への信頼回復と、政府が推進する安定供給体制の整備があります。アンドファーマは複数企業の製造・開発機能を束ねることで生産能力を底上げし、需要変動に強い体制を構築。今回の資本参加は、その成長戦略を加速させる起点になります。
第三者割当増資の概要
2025年9月22日、アンドファーマは持田製薬と伊藤忠商事を割当先とする第三者割当増資を決議しました。払込期日は10月1日(予定)で、両社は同社の普通株式を合計約324億円で取得します。本増資によりアンドファーマの自己資本は大幅に強化され、グループ各社の生産設備投資や品質管理体制の増強に充当される計画です。詳しい条件は持田製薬の適時開示資料に掲載されています(PDF)。
発行済株式総数の20%相当を割り当てるため、持田製薬が197,818,534株(議決権比率20.0%)、伊藤忠商事が同等株数を取得するスキームです。第三者割当増資は既存株主の持分を希薄化させる一方、経営の独立性を保ちつつ外部資本を呼び込める利点があります。今回は既存株主・JWP系ファンドからの一部株式譲受も同時に行い、出資比率をきれいに20%へそろえた点が特徴です。
20%株式取得の狙いとシナジー
持田製薬の出資目的は「後発薬・バイオシミラー分野での開発・製造シナジー創出」です。持田は研究開発ノウハウ、アンドファーマは製造キャパシティという補完関係にあり、提携でコスト最適化と供給安定の双方を狙います。一方、伊藤忠商事は原薬調達力とグローバル物流網を活用し、原材料コスト削減や海外販路開拓に貢献する構え。両社が参加することで、原薬調達→製造→販売まで一気通貫のバリューチェーンが完成します。伊藤忠プレスリリースに、具体的な協業項目が列挙されています。
また、持田製薬は2025年度から始動した「25-27中計」で、先発薬に加え後発薬・バイオシミラーを柱とする“二輪駆動”型成長戦略を掲げています。アンドファーマへの出資は、中計の重点施策「医薬事業の収益力強化」を具体化する第一弾。共同開発や製造委託により原価率を下げ、利益体質を高める算段です。
出資各社のコメントと役割
持田製薬
「自社が培ったバイオシミラー開発知見とアンドファーマの製造能力を融合し、国産バイオシミラーの供給体制を確立する」(同社IR資料より)。持田は既存製品の一部生産をアンドファーマ子会社へシフトし、変動費の抑制と供給リスク低減を図る方針です。
伊藤忠商事
「生活消費分野の販売接点と物流網を活かし、後発薬の流通効率化と新たな販路構築に挑む」(同社プレスリリース)。原薬の現地調達や長距離輸送の最適化を通じ、医薬品サプライチェーンのレジリエンス向上に寄与します。
国内ジェネリック市場への影響
ジェネリック数量シェアは2023年度に政府目標の80%を達成したものの、製造停止や品質不良による供給不足が社会問題となりました。市場再編が加速する中、大手先発薬メーカー・総合商社が出資する事例は珍しく、医薬品業界の垣根を越えた新たな再編モデルとして注目されています。アンドファーマは複数メーカーの製造ラインを束ねる“プラットフォーム型”の枠組みを採用しており、規模の経済と設備稼働率を高めることでコスト競争力を強化できます。
さらに、原薬調達から製剤まで国内完結させる体制が整えば、為替や地政学リスクに左右されない供給網が形成され、医療インフラの強靱化にも貢献します。医療費抑制と品質維持という相反しがちな政策要求を両立させる試金石となるでしょう。
今後のスケジュールと見通し
- 9月19日:持田製薬取締役会で出資を承認
- 9月22日:両社とアンドファーマが最終契約締結
- 10月1日:第三者割当増資払込および株式譲渡実行(予定)
- 2026年3月期:アンドファーマは両社の持分法適用関連会社に
増資後の資金は、①子会社設備のGMP適合投資、②バイオシミラー製造技術の高度化、③デジタル品質管理プラットフォームの導入に充当予定です。シナジー創出スピードは、委託製造契約の進捗や共同開発案件の採算性に左右されますが、持田製薬は「3年以内に営業利益ベースで年20億円以上の寄与を目指す」とコメントしています。
編集部まとめ
第三者割当増資での20%株式取得は、単なる資本参加を超えた「業界構造改革」の刀鍛冶です。先発薬メーカーと総合商社が手を組み、ジェネリックメーカーの製造・流通を再設計する枠組みは、医薬品安定供給と医療費抑制という社会課題に対する現実的な解になります。アンドファーマは今後、国内サプライチェーンのハブとして地位を固め、ひいてはグローバル市場への展開も視野に入れるでしょう。増資完了後の統合プロジェクトの進捗から目が離せません。

石井英治
資金調達アドバイザーとして企業・個人の資金繰りのサポートを行う。モットーは「資金調達は安全で信頼できるサービスを選べ」。業界歴25年。