Zen IntelligenceがシリーズAで15億円調達──AIエージェント×ハードウェアで建設現場の無人化を加速

石井英治 資金調達ニュース - ファクタリング・私募債・融資・出資 など
Zen IntelligenceがシリーズAで15億円調達したことを受け、建設現場での無人化の様子を描いた画像。ロボットとAIエージェントの協力が示されています。

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Zen Intelligence、シリーズAで総額15億円を調達──「Physical AI」で建設現場の無人化を前倒し

建設業界向けにAIとハードウェアを融合したPhysical AIプラットフォームを提供するZen Intelligence株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役:野﨑大幹)は2025年9月25日、第三者割当増資と金融機関からの借入を合わせ総額15億円のシリーズA資金調達を完了したと発表しました。調達にはZ Venture Capitalやファーストライト・キャピタルといった国内外のVC5社に加え、日本政策金融公庫、りそな銀行の2行が参加しています。今回の資金は、建設現場をデジタルツイン化する既存プロダクト「zenshot」の高度化や、Vision-Language Model(VLM)を活用した現場管理AIエージェントの開発、人材採用に充当される予定です。公式プレスリリースより

資金調達の内訳と参画投資家

調達総額の15億円のうち、第三者割当増資が中心となるエクイティファイナンスには以下のVCが参加しました。

  • 新規投資家:Z Venture Capital/Angel Bridge/Rice Capital
  • 既存投資家:ファーストライト・キャピタル/インキュベイトファンド

また、日本政策金融公庫りそな銀行からのデットファイナンス(借入)も実施。成長フェーズにおける資本効率を最適化する狙いがあります。資金使途は次章で詳述します。PR TIMES

背景:慢性的な人手不足と「2024年問題」

建設業界では高齢化と若年層の入職減少が進み、2030年までに技術者約4.5万人、技能工約17.9万人が不足すると推計されています。さらに2024年4月から適用された時間外労働の上限制(いわゆる「2024年問題」)により、現場監督の労働時間削減が急務となりました。こうした課題を受け、Zen IntelligenceはAIとロボティクスを合わせた「現場管理の無人化」というテーマに挑戦しています。同プレスリリース

資金使途:AIエージェント、VLM、ハードウェア開発

公式発表によれば、調達資金は主に以下の3領域に投下されます。

  1. AIエージェント/VLM開発強化:現場写真・動画・センサーデータを理解する建設特化型VLMを開発し、監督が行ってきた判断や指示をAIが自律実行。
  2. ハードウェアデバイス開発:多様なフィジカルデータを収集するIoTデバイスを独自設計し、AIとのシームレスな連携を実現。
  3. 人材採用・組織基盤強化:Kaggle Masterやロボティクス専門家などトップタレントの採用を加速。

これにより、デジタルと物理を統合した「現場のAIネイティブ化」を推し進める構想です。PR TIMES

プロダクトロードマップ:「zenshot」から自律型現場へ

Zen Intelligenceは、建設現場を撮影・スキャンしデジタルツインを生成するSaaS「zenshot」を提供しています。現在は遠隔からの現場確認・進捗管理が中心機能ですが、今後は以下を予定しています。

  • AIエージェント:工程遅延や安全リスクを自動検知し、チャット形式で監督に通知。
  • 自律制御ロボット連携:将来的にはドローンや自走ロボットと連携し、施工品質検査や資材搬送を自動化。

これらの実装により「監督が現場に赴かなくても工事が回る」状態を目指します。公式サイト

投資家コメントにみる評価ポイント

主幹投資家のZ Venture Capitalは「AI活用の恩恵が届きにくかったエッセンシャルワーカー領域で基盤モデルを開発する希少なチーム」と評し、既存投資家インキュベイトファンドは「ロボティクスとAIを横断できる国内トップクラスの人材が集結している」とコメント。VC各社が共通して挙げた評価軸は次の通りです。

  • 急成長する市場規模:建設テック市場は2028年に6,000億円規模との予測があり、需要の裾野が広い。
  • 独自データアセット:「zenshot」に蓄積される数万件の現場データがAI学習に不可欠。
  • 技術とPMFの両立:リリースから2年で大手ハウスメーカー多数に導入済みという実績。

これらの点が高い企業価値評価(プレマネー非公開)につながったとみられます。PR TIMES

業界インパクト:建設DXの本丸へ

既存の建設DXは図面管理や施工管理SaaSが主流でしたが、Zen Intelligenceの強みは「デジタルとフィジカルを往還するAI」にあります。人手不足が顕在化する中、作業員・監督の負担軽減だけでなく、安全性向上・品質均一化の効果も期待できる点は、他社SaaSでは代替が難しい領域です。特に公共工事やインフラ保守での適用余地は大きく、調達資金を背景に自治体・ゼネコンとの共同実証も拡大すると見込まれます。公式サイト

競合比較で際立つ「Physical AI」アプローチ

建設テック市場には施工管理SaaS大手のA社、進捗共有アプリB社などが存在しますが、彼らのビジネスモデルはソフトウェア完結型が中心です。一方、Zen Intelligenceはハードウェア開発とAIモデル訓練をワンストップで行う「Physical AI」戦略を採用。これにより、データ→学習→制御を自社内で完結させ、PDCA高速化と差別化を実現しています。今回の大型調達は同社の垂直統合モデルをさらに強固にし、後発組にとっての参入障壁を高めるものと言えます。PR TIMES

編集部まとめ:次の焦点は商用化スケールと海外展開

シリーズAで15億円を確保したZen Intelligenceは、AIエージェントの商用リリースとハードウェア量産体制の構築が当面のマイルストーンとなります。建設業界の需給ギャップが拡大する中、同社の技術が標準化すれば「人が足りなくてもプロジェクトが止まらない」世界が見えてきます。国内PMFを固めた後、アジアを中心とした海外進出も視野に入るとみられ、今回の調達はその布石と言えるでしょう。今後の動向から目が離せません。

記事ライター

石井英治

資金調達アドバイザーとして企業・個人の資金繰りのサポートを行う。モットーは「資金調達は安全で信頼できるサービスを選べ」。業界歴25年。
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