Excel依存を断ち切る次世代AI──「DataFlow AI」7,500万円調達で製造業の“DX空白地帯”に切り込む
製造業向けAI「DataFlow AI」が総額7,500万円を調達──UnlimiTechが現場DXの“空白地帯”を埋める
1.資金調達の概要
2026年1月8日、株式会社UnlimiTech(東京都港区、代表取締役:中川高之)は、みずほ銀行・日本政策金融公庫・国内VCなどを引受先とする第三者割当増資と融資により、総額7,500万円の資金調達を完了したと発表しました。公式プレスリリースによれば、今回のラウンドは創業後初の調達であり、開発中の製造業向けAIワークフロー「DataFlow AI」の事業基盤強化を主目的としています。調達スキームはJ-KISS型新株予約権の発行と金融機関融資を組み合わせるかたちで構成され、スタートアップ×銀行×公的金融機関によるハイブリッドファイナンスの好例として注目されています。
同社は昨年9月にプレシードで得た資金をもとにPoC(概念実証)を推進。本調達で得たリソースにより、PoC結果を量産可能なプロダクトへと昇華させる段階に移行します。
2.調達に至った背景と市場ニーズ
少子高齢化による人手不足、熟練技術者の大量退職、そして数十年にわたって現場を支えてきたExcelマクロの属人化──日本の製造業は“三重苦”とも言える課題を抱えています。AIやIoTによるスマートファクトリー化が進む一方、「ERPとMESの間に残されたExcel業務」はデジタル化が最も遅れた空白地帯とされ、業務停滞やミス誘発の温床になってきました。UnlimiTechはこの領域を“DX の盲点”と捉え、自然言語で指示するだけでExcelマクロ相当の処理を自動生成・実行できる「DataFlow AI」の開発を進めています。
現場担当者が日本語チャットで「このCSVをまとめ、歩留まりを月次で可視化して」と入力すると、AIが適切なデータ整形・グラフ作成まで一気通貫で行う設計です。PoCでは最長3日かかっていた手作業が最短10分に短縮され、生産計画のリードタイム短縮へ寄与したといいます。創業手帳の解説記事でも、同社が狙う“Excel依存からの脱却”ニーズの大きさが報じられています。
3.「DataFlow AI」の技術的特徴
プレスリリースで公開されたプロダクトロードマップによると、「DataFlow AI」は以下の三層で構成されます。
- 自然言語インターフェース:ChatGPT系LLMを活用し、専門用語を含む現場語にも対応
- ワークフローエンジン:Pythonベースの処理テンプレートを組み合わせ、ETL・統計解析・可視化を自動生成
- セキュリティレイヤー:オンプレミス導入やISMS取得に対応し、機密図面・工程データを保護
特筆すべきは「テーブル構造が不統一なExcelでも、行列パターンを学習して自動整形する“セル構造推定AI”」です。これにより、現場ごとに独自進化した帳票フォーマットでも追加学習なしで取り込める点が差別化要因とされています。
4.資金使途と今後のマイルストーン
調達資金の主な使途は(1)エンジニア・ドメインエキスパート採用、(2)正式ローンチ(2026年1月下旬予定)に向けたサーバ増強とサポート体制整備、(3)販売パートナー網の構築──の三点です。製造業特有の24時間稼働ラインに耐えるSLA(99.9%)を満たすため、クラウド×オンプレのハイブリッド構成を標準とし、エッジ推論モジュールの開発も加速させるとしています。
同社は2026年度内にMRR(毎月経常収益)ベースで1億円到達を目標に掲げ、国内Tier1サプライヤー5社との有償トライアルをすでに契約済みです。
5.投資家・金融機関の顔ぶれ
引受先には、製造業DXファンドを運営する国内VC2社に加え、みずほ銀行と日本政策金融公庫が参加。VC側は「製造業のデジタル化でもっとも取り残されたExcel自動化領域は数百億円規模」と市場潜在性を評価しています。金融機関は設備投資需要を背景に運転資金を融資し、今後の追加融資枠も示唆しました。VCと銀行が役割分担し、事業会社とのアライアンスを促進する体制が整っています。
6.代表取締役 中川氏のコメント
中川氏は「日本のモノづくり現場には世界に誇る知恵が眠るが、属人化したExcelに閉じ込められている。DataFlow AIで“現場の秘伝のタレ”を未来につなぐ」と語り、技術継承と人材不足解消の両立を掲げました。さらに「生成AIで一足飛びに自動化が完遂するわけではないが、ピンポイントの業務から着実に成果を示せることをPoCで実証できた」と実務適合性への自信も示しています。
7.競合環境と差別化ポイント
国内では製造DX系SaaSが乱立していますが、ERPやMESを完全刷新する“大規模パッケージ”と比べ、DataFlow AIは「既存システムの狭間に残ったExcel業務に特化」する点で明確に棲み分けています。海外のRPA+GPT連携ソリューションとも競合しますが、日本語特化のLLMファインチューニングと、工程内で頻出する半角全角混在データの補正機能など、ローカル要件を踏まえたきめ細かな実装が優位性となっています。
8.編集部による総評
製造現場DXのゴールは“完全自動化ライン”に目が行きがちですが、実務ではExcelに残る手作業がボトルネックになるケースが少なくありません。UnlimiTechのアプローチは、「いきなり刷新」ではなく「現場に寄り添いながら少しずつ自動化レベルを上げる」という点で実務的です。金融機関を巻き込んだハイブリッド調達も、政策的に重視される中小製造業DXのモデルケースとして参考になるでしょう。正式ローンチ後の実運用データが公開されれば、さらなる資金流入や海外展開も視野に入ると期待されます。
石井英治
資金調達アドバイザーとして企業・個人の資金繰りのサポートを行う。モットーは「資金調達は安全で信頼できるサービスを選べ」。業界歴25年。