AdipoSeeds、シスメックス参画で臨床フェーズ加速──脂肪由来血小板製剤の実用化へ3000文字超で徹底解説
AdipoSeedsが新規資金調達、再生医療製品開発を加速
慶應義塾大学発ベンチャーの株式会社AdipoSeedsは2026年1月9日、シスメックス株式会社とDCIパートナーズ運営ファンドを引受先とする第三者割当増資を実施したと発表しました。出資比率や調達額は非公表ですが、再生医療等製品「ASCL-PLC」の臨床開発体制を拡充することが目的です。PR TIMESプレスリリース(2026年1月9日) によれば、同社は脂肪組織由来の血小板様細胞を国内外へ安定供給し、血小板不足という社会課題の解決を目指しています。
今回の資本参加により、臨床検体検査・細胞製造で豊富なノウハウを持つシスメックスと、ライフサイエンス領域に投資実績のあるDCIパートナーズが技術・資金の両面で支援。研究開発の加速だけでなく、品質管理や製造工程の省人化など商業化フェーズを見据えた協業体制が整います。
資金調達の概要
公開情報から整理した今回のラウンドのポイントは次のとおりです。
- 日付:2026年1月9日
- スキーム:第三者割当増資(シリーズ名称非開示)
- 引受先:シスメックス株式会社、
DCIパートナーズ株式会社(大和日台バイオベンチャー2号投資事業有限責任組合) - 資金使途:難治性皮膚潰瘍向けADS-01および輸血用血小板ADS-02の企業治験準備、
品質管理・細胞製造プロセスの共同開発など
企業側コメントでは「シスメックスの検体検査アセットを活用し、高品質・省人化を実現する」とし、投資家側も「グローバルで競争力のある血小板製造技術への成長を支援する」と述べています。シスメックス会社概要
調達資金の使途と開発ロードマップ
AdipoSeedsは脂肪由来幹細胞を培養し血小板様細胞へ分化させる独自技術を持ちます。今回調達した資金は主に下記へ充当されます。
- ADS-01(難治性皮膚潰瘍向け)
AMED「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」に採択済。2026年度内の国内第Ⅰ/Ⅱ相試験開始を目標。 - ADS-02(輸血用血小板向け)
東京科学大学での探索的臨床研究準備が完了。再生医療等提供計画の審査を経て安全性試験へ進む。 - 製造・品質管理の共同開発
シスメックスの自動化装置、検体検査データを組み込み、高品質かつ低コストな細胞製造ラインを構築。
これらにより、企業治験開始時期を従来計画から半年前倒しする見込みが示されています。同プレスリリース
過去の資金調達との比較
AdipoSeedsは2022年12月にDCIパートナーズ、ニッセイ・キャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、Gemsekiから総額16億円を調達しています。日本M&Aセンター記事 当時の資金は研究開発設備とPRP受託事業の立ち上げに充当され、非臨床試験の完了と治験申請資料の整備が進みました。今回のラウンドは、前回で整えた基盤を臨床フェーズへ引き上げる“スケールアップ型”の性格が強い点が特徴です。
技術的優位性:ASCL-PLCとは
従来の血小板製剤は献血に依存し、保存期間も5日程度と短い課題がありました。AdipoSeedsのASCL-PLCは、脂肪由来間葉系幹細胞株ASCLを大量培養し、血小板様細胞へ分化誘導することで安定供給を可能にします。遺伝子導入を行わないため安全性リスクを抑えつつ、低コストで大量生産できるのが最大の強みです。公式サイト
また、細胞膜受容体・成長因子を自然発現させることで、止血だけでなく組織修復能力も高い点が臨床研究で示唆されています(Regenerative Therapy 30巻, 2025年)。
業界へのインパクト
日本では高齢化に伴い血小板需要が年2%超で増加する一方、献血者数は減少傾向にあります。ASCL-PLC技術は「献血依存からの脱却」という国策課題に合致し、厚労省の再生医療実用化ロードマップにも沿う形です。さらにシスメックスのグローバルネットワークを通じ、アジア・欧米への展開可能性が高まることで、世界的な血小板不足解決に寄与すると期待されています。
投資家・提携先のコメント
- シスメックス:「細胞製造の自動化技術を持ち寄り、高品質な再生医療製品を市場へ届ける」
- DCIパートナーズ:「国際競争力を持つ血小板製造プラットフォームに育成し、アジアの創薬エコシステム強化を図る」
- AdipoSeeds 不破淳二CEO:「脂肪から血小板をつくり新しい血液の流れを創るというミッションを、いよいよ臨床現場で実証する段階に入った」
今後の見通しと課題
2026年内にADS-01第Ⅰ/Ⅱ相試験開始、2027年にトップラインデータ取得という工程表が示されています。細胞製造のスケールアップやGMP体制強化、保険償還価格の議論など課題は山積していますが、国内AMED事業採択や大手診断機器メーカーとの連携により資金・技術両面のリスクヘッジが図られています。海外展開には各国規制対応と知財戦略が鍵となるでしょう。
まとめ
本資金調達により、AdipoSeedsは研究段階を抜け臨床・製造体制の構築フェーズへと大きく舵を切ります。脂肪由来血小板製剤というユニークなアプローチが、献血依存の課題解決と新たな再生医療市場の創出を同時に狙う点で注目度は高く、同社の今後の動向から目が離せません。
石井英治
資金調達アドバイザーとして企業・個人の資金繰りのサポートを行う。モットーは「資金調達は安全で信頼できるサービスを選べ」。業界歴25年。