請求書をカード払いに変える革新的BtoB決済サービス「支払い.com」徹底解説|累計1,000億円突破の理由と今後の展望
支払い.comとは何か
「支払い.com」は、株式会社UPSIDERと株式会社クレディセゾンが共同で提供するBtoB向け決済サービスです。請求書払いをクレジットカード決済へ置き換えることで、最大60日程度まで資金繰りの猶予を確保できる点が評価されています。公式サイトによると、銀行振込専用だった取引先への支払いもカードで完結し、振込業務の手間と時間を削減できる仕組みが特徴です。
同サービスは2022年4月に正式リリースされました。審査書類や担保の提出は不要で、オンライン申請から最短即日で利用開始できる点が中小企業・スタートアップの支持を集めています。クレジットカードの利用枠を活かして資金繰りを平準化できるため、成長投資にリソースを回しやすくなるのが魅力です。2022年4月27日付プレスリリース
サービスの概要と提供企業
UPSIDERは法人カード事業で培った審査・与信ノウハウを活用し、決済オペレーションを担当します。一方、クレディセゾンは大手カード会社としての決済ネットワークとセキュリティ基盤を提供。両社の強みを組み合わせることで、カードブランドの縛りなく幅広い企業が導入しやすい環境を整えました。
主要ターゲットは「支払いサイトと入金サイトのズレ」に悩む企業。銀行融資やファクタリングに比べて手続きが簡素で、最小限のコストでキャッシュフローを延ばせる点が差別化ポイントです。
主要な機能とメリット
- 支払い猶予の延長:カード引き落とし日まで最大60日程度支払いを延期し、資金繰りを改善
- 一律4%の手数料:業界最低水準とされる固定手数料でコストを予測しやすい
- オンライン完結:Webフォームに請求書情報を入力し、カード決済するだけのシンプルフロー
- 即日利用:担保・保証人不要、書類提出も不要で最短当日に決済開始
公式サイトやプレスリリースが示す通り、これらの機能は「バックオフィスの効率化」と「資金調達手段の多様化」を同時に実現します。
成長の軌跡
「支払い.com」はリリースから約3年で累計決済額1,000億円を突破しました(2025年3月発表)。サービス開始当初はスタートアップの利用が中心でしたが、現在では製造業やIT企業など幅広い業種に拡大しています。
リリースから累計決済額1,000億円到達まで
2025年3月25日に公開されたクレディセゾンのプレスリリースでは、累計決済額が1,000億円を超えたと報告されています。当該リリースによれば、2024年3月時点で400億円だった決済額が、わずか1年で2.5倍以上に伸長しました。後払いニーズの高まりと、カード決済のポイント還元を活用した資金効率の改善が背景にあると分析されています。
請求書カード払いおすすめ15選を徹底比較という記事でも比較しています。
パートナー型提供開始の意義
2025年7月、UPSIDERは「パートナー企業経由でのサービス提供」を開始しました。2025年7月1日付リリースによると、自社で決済機能を持たないSaaS企業や金融機関が、「支払い.com」をホワイトレーベルで提供可能になります。これにより、UPSIDER側は審査・オペレーションを一括代行し、導入企業は自社ブランドで請求書カード払いサービスを展開できるようになりました。今後はエコシステム拡大によるネットワーク効果が期待されています。
仕組みと利用フロー
「支払い.com」の利用フローはシンプルです。ユーザーは請求書PDFと支払先情報をアップロードし、クレジットカード情報を入力するだけ。カード会社からUPSIDERを経由して振込が実行され、支払先には通常の銀行振込が届きます。
申込から決済までのステップ
- 会員登録(メールアドレスと会社情報を入力)
- 利用カード登録(主要国際ブランドに対応)
- 請求書アップロード・決済指示
- UPSIDERが支払先へ振込
- カード会社から利用企業へ請求
手続きはオンラインで完結し、書類郵送や対面審査は不要です。24時間365日申請できるため、繁忙期や休日でもキャッシュフローを調整できます。
手数料・支払いサイト
手数料は利用金額の一律4%(税込は別途)で、事前に固定化されているため計算が容易です。支払いサイトは利用カードの締め日+引き落とし日まで延長されるため、最大で約60日の猶予が得られます。例えば月末締め翌月26日払いのカードを使えば、月初の請求書支払いをほぼ2か月後まで先延ばしできます。
利用シーンと導入効果
「支払い.com」は業種や規模を問わず導入されていますが、とりわけ資金繰りに制約のある中小企業に恩恵が大きいとされます。また、大企業やスタートアップでも、広告費や外注費など支払い頻度の高い経費をカード決済化し、与信枠を有効活用するケースが増えています。
中小企業の資金繰り改善
中小企業は受注から入金までの期間が長く、支払いサイトが短いという構造的課題を抱えがちです。カード払いに変えることで当面のキャッシュアウトを抑制でき、ファクタリングや短期融資に頼る頻度を減らせます。さらにカードポイントやマイルが付与されるため、実質的なコストダウン効果も期待できます。
大企業・スタートアップの使い分け
- 大企業:グループ会社間請求の一元化や、月次決算の迅速化
- スタートアップ:資金調達ラウンドまでのブリッジとして短期的に運転資金を確保
- 共通:海外SaaS利用料・広告費などカード払いと親和性の高い支出を集中させ、経理処理を効率化
セキュリティとガバナンス
決済情報は国際セキュリティ基準PCI DSSに準拠した環境で管理され、トークナイゼーションによりカード番号は非保持化されています。クレディセゾンの決済基盤を経由することで、不正検知エンジンやチャージバック対応が組み込まれている点も安心材料です。
国際ブランド対応と決済インフラ
Visa、Mastercard、American Expressなど主要ブランドに対応し、カード会社の与信枠内であれば高額な請求書でも決済可能です。決済インフラはクレディセゾンが長年構築してきたネットワークを利用するため、国内外の決済障害リスクを最小限に抑えています。
個人情報・PCI DSSなど
UPSIDERはISO/IEC 27001(ISMS)認証を取得し、データ暗号化やアクセス権限管理を徹底しています。さらにカード情報は決済代行会社のトークンに置き換えられ、プラットフォーム上で生データを保持しない設計です。これにより、改正個人情報保護法やPCI DSSへの適合を図っています。
今後の展望と課題
国内BtoB決済市場は約1,500兆円規模と言われており、カード払いの浸透率はまだ数パーセントに留まります。そのため「支払い.com」には大きな成長余地があります。一方で、電子帳簿保存法改正やインボイス制度など、会計・税務の法規制動向を踏まえた機能追加が不可欠です。
コ・クリエーションの可能性
パートナー型提供を通じて、SaaSベンダーが自社ERPや請求書管理システムに「支払い.com」の決済機能を組み込む動きが加速する見込みです。これにより、利用企業は自社の業務フローを変更せずにカード決済を導入でき、サービス側は決済データを活用した新たな付加価値創出が期待できます。
資金繰りを改善!手数料2.24%〜の請求書カード払いサービスまとめでも比較記事を出しています。
法規制と市場動向
2023年のインボイス制度施行により、適格請求書発行事業者番号の登録・管理が必須となりました。「支払い.com」は請求書データと決済情報を紐付ける機能を強化し、電子帳簿保存法にも準拠した証憑管理体制を整えています。今後はデジタルインボイス(Peppol)への対応や、海外送金領域との連携が課題となるでしょう。
セキュリティと信頼性:3Dセキュア対応で安心
支払い.comはクレディセゾンと共同で運営されており、決済時には国際ブランドが推奨する3Dセキュアを採用しています。ワンタイムパスワードで本人認証を行うため、なりすまし取引を大幅に抑止できます。またカード情報はPCI DSS準拠のゲートウェイで暗号化処理され、サービス側にも保持されません。通信はTLS1.2以上で常時SSL化されており、登録フォームで入力する法人情報や口座情報も保護されています。こうした多層防御により、80,000社を超える導入実績を支える堅牢な基盤が構築されています。支払い.com公式
利用履歴は管理画面でリアルタイム確認でき、二要素認証でアクセスを制限。さらに独自のリスクモニタリングが24時間稼働し、「自社宛振込」「換金目的」など利用規約で禁じる取引を自動検知します。サポートは平日9:00〜17:30に電話とメールで受け付けており、緊急時も早期対応が可能です。サポート窓口
インボイス制度・電子帳簿保存法への実務対応
振込完了後にPDF形式の支払明細が即時発行され、振込金額と手数料4%が明細内で一括確認できます。適格請求書の保存要件を満たす形式で出力できるため、インボイス制度下でも証憑の追加取得は不要です。さらにCSVエクスポートに対応しており、freee会計・マネーフォワードクラウドなど主要会計ソフトへインポートするだけで仕訳が自動作成されます。これにより経理担当者の手入力を削減し、電子帳簿保存法の検索要件も容易にクリアできます。支払い.com公式
石井英治
資金調達アドバイザーとして企業・個人の資金繰りのサポートを行う。モットーは「資金調達は安全で信頼できるサービスを選べ」。業界歴25年。