2025年最新版|請求書支払い代行サービス徹底比較と電帳法対応のポイント
請求書支払い代行サービスとは
請求書支払い代行サービスは、取引先から届く請求書の受取・振込・仕訳・保管までを外部事業者が一括で担うバックオフィス支援サービスです。振込期日に間に合うよう資金移動を自動化し、経理担当者は金額や口座を再入力する手間から解放されます。個人事業主から上場企業まで導入が進み、電気料金・税金など生活関連の「Pay系」決済も普及しています。請求業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を後押しする具体策として注目度が高まっています。
DX推進とともに電子帳簿保存法の改正が続き、紙帳票の保管義務が大幅に緩和されたことも追い風です。サービス提供会社は決済インフラやOCR、RPAを組み合わせて多数の請求書を高速処理し、顧客はキャッシュフローの可視化や内部統制強化を図れます。
利用が広がる背景
背景には①インボイス制度の施行で経理処理が複雑化したこと、②リモートワーク浸透による紙書類の受領・押印の課題、③資金繰り多様化によるカード払いやBNPL(後払い)需要の高まりがあります。特にスマホ決済事業者が公共料金・税金の「請求書払い」を拡張し、消費者にも身近な存在になりました。経済産業省は「キャッシュレス・ビジョン」で2025年までにキャッシュレス比率40%超を掲げており、その一翼を担う分野として期待されています。
基本的な仕組み
多くのサービスは次の流れで稼働します。
- 1. 取引先が発行した紙・電子請求書をスキャンまたはAPI連携で受領
- 2. OCRで金額・期日・口座番号を自動抽出し、仕訳候補を生成
- 3. 代行会社名義のバーチャル口座から振込を実行(利用企業はまとめて後払い)
- 4. 支払い実績を会計ソフトへ連携し、領収書画像を電子保管
ワークフロー上で承認フローを標準搭載するため、社内規程に沿ったチェック体制を維持したまま業務を外部化できます。
代表的な国内サービス
国内には銀行系・フィンテック系・会計ソフト系など多様なプレイヤーが存在します。ここでは特徴的な3社をピックアップします。
PayPay請求書払い
バーコード付き払込票をPayPayアプリで読み取るだけで24時間決済できる機能です。電気・ガス・水道・税金など3,600超の事業者に対応し、2025年3月時点で公共料金の主要インフラを網羅しています。NP後払いの払込票にも2025年6月から対応し、通販分野へ裾野を拡大しました。公式解説
GMO「請求書カード払い byGMO」
仕入先が銀行振込のみを指定していても、買手は自社のクレジットカードで支払えるBtoB決済サービスです。資金繰りを最長60日延長でき、年間12兆円規模の決済処理基盤を活用しています。GMO公式
freee受取請求書アシスト
紙請求書の受領・スキャンから仕訳登録までをプロスタッフが代行するサービスです。freee会計とシームレスに連携し、郵送代行は1通210円〜の従量課金で利用可能(2024年10月改定)。freeeヘルプ
導入メリット
請求書支払い代行を導入することで、①入力ミス削減による誤振込防止、②振込手数料の一括削減、③紙帳票発送コストの圧縮、④与信枠やカードポイントを活用した資金繰り改善など、多面的な効果を得られます。
支払い側企業の利便性
総務・経理が月末に集中していた振込作業を分散化できる上、スマホ決済やカード払いにより現金需要を抑えられます。PayPayのような24時間決済は金融機関営業時間に縛られず、業務効率向上に寄与します。
受け取り側の業務効率
売掛金回収を代行事業者が担保する形態では、未入金リスクを軽減し、消し込み作業も自動化できます。GMOのように振込明細を自動取得する機能があれば、入金確認の属人化を解消できます。
法制度と留意点
電子帳簿保存法(電帳法)は2022年以降の段階的改正で電子取引データ保存義務を明確化しました。領収書PDFやスキャン画像は、検索機能・改ざん防止措置を備えたシステムで7年間保存する必要があります。国税庁通達
電子帳簿保存法対応
導入時は「タイムスタンプ付与」「検索キー3項目」「真実性の確保」など電帳法要件を満たすか確認が欠かせません。freeeやGMOはJIIMA認証を取得しており、導入企業は追加開発なく法令遵守を図れます。
セキュリティと個人情報保護
請求書には口座番号や取引先情報が含まれるため、ISMS認証やPCI DSSへの準拠状況をチェックします。クラウド型の場合はデータセンターの所在地、バックアップ体制、ログ監査の有無が評価ポイントです。
選定ポイント
数多くのサービスから自社に最適なものを選ぶ際は、①料金体系(件数課金・定額課金)②対応決済手段(銀行振込・カード・スマホ決済)③会計ソフト連携範囲④サポート体制⑤導入実績—の5軸で比較します。
手数料・費用構造
PayPay請求書払いはユーザー手数料無料ですが、事業者がバーコード発行手数料を負担します。GMOは売上代金の数%+カードブランド手数料、freee郵送代行は1通210円〜と課金モデルが異なるため、月間処理件数を試算したうえで総コストを把握しましょう。
サポート・拡張性
国際展開を視野に入れるなら複数通貨決済や外国語UIの提供可否も重要です。また、RPA連携やワークフローAPI公開の有無によってシステム拡張コストが大きく変わります。障害発生時の復旧SLAやカスタマーサクセス体制も評価ポイントです。
まとめ
請求書支払い代行サービスは、経理の省力化とキャッシュレス推進を同時に実現する有効な選択肢です。電帳法やインボイス制度への対応を見据え、自社の業務量・コスト構造・ガバナンス要件を整理したうえで、最適なサービスを選定しましょう。まずは無料トライアルや資料請求で機能を体験し、業務フローのDXを加速させることが重要です。
セキュリティと監査対応
FISC基準・ISO取得の有無を必ず確認
請求書支払い代行サービスは資金移動を伴うため、利用企業は金融情報システムセンター(FISC)の安全対策基準やISO/IEC 27001認証の取得状況をチェックしたい。たとえばマネーフォワードケッサイはISO/IEC 27001を取得済みで、第三者機関による年次監査を受けていると公表している公式情報。このように認証・監査レポートを開示する事業者は、リスク説明責任(アカウンタビリティ)を果たしていると判断しやすい。
二要素認証・IP制限など運用面も要チェック
- 二要素認証(2FA)やSAML連携が設定可能か
- 管理画面へのIPアドレス制限・操作ログの保持期間
- 改ざん防止のためのWORMストレージ採用有無
金融庁の「金融分野におけるサイバーセキュリティ強化に向けた取組み」も参照し、事業者がゼロトラストモデルを採用しているか確認すると安心だ金融庁。
インボイス制度・電子帳簿保存法への適合
電帳法スキャナ保存・電子取引要件をクリアしているか
2024年1月改正の電子帳簿保存法では電子取引データの保存要件が厳格化された。国税庁は「データ改ざん防止措置」としてタイムスタンプ付与や訂正削除の事実を記録する機能を求めている国税庁。代行サービスが自動付与・保存を提供していれば、別途システムを用意せずに済む。
適格請求書(インボイス)の発行・受領フロー
仕入税額控除を確実に行うには、サービスが「適格請求書発行事業者番号」を自動取得し、PDF/XML双方でダウンロード可能かが鍵となる。国内大手のSAP Concur InvoiceはPeppolネットワークを通じた電子インボイス送受信に対応し、発行番号をメタデータとして保持する仕様を公開している公式情報。
このように法規制・監査を俯瞰しながらサービスを選定することで、導入後の改修コストとコンプライアンスリスクを最小限に抑えられる。
石井英治
資金調達アドバイザーとして企業・個人の資金繰りのサポートを行う。モットーは「資金調達は安全で信頼できるサービスを選べ」。業界歴25年。