715億円調達でAI基盤を強化︱クオンタムソリューションズの挑戦と次の一手【資金調達総額260億円超】

石井英治 資金調達ニュース - ファクタリング・私募債・融資・出資 など
Quantum Solutions、AI事業強化へ260億円超調達に関する記事のアイキャッチ画像。日本の都市の風景に抽象的な形があり、技術革新を感じさせる。

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クオンタムソリューションズが約715億円を確保、AI事業拡大へ加速

東証スタンダード上場のクオンタムソリューションズ(2338)は2025年5月19日、世界的オルタナティブ投資機関 Arena Business Solutions Global SPC II Ltd. と最大5,000万米ドル(約715億円*、1ドル=143円換算)の出資に向けた基本合意書(MOU)を締結したと発表しました。これにより同社の累計調達額は、2024年以降のラウンドと合わせて260億円超に達し、AIゲーム/AIインフラの両面で大型投資を加速できる体制が整いました。ソース

資金使途:GPUクラウドとAAA級AIゲームの二本柱

今回の資金は主に以下の領域に投下されます。

  • AIインフラ:Turbo AI Solutionsとの共同プロジェクトで、日本国内にGPUクラウド基盤を構築。最新NVIDIA製Hopper世代GPUを中心に、学習向けと推論向けのハイブリッドクラスタを整備し、来春から法人向けIaaSとして提供開始予定。ソース
  • AIゲーム:JP GAMESと共同開発中のAAAタイトル「Project Jewel」および既存IP「GYEE 2.0」の開発・マーケ費用。深層生成AIを用いたNPC対話エンジンやライブアセット生成技術を自社パイプラインに実装し、2026年度の正式リリースを目指す。

これらの施策により、同社は「モバイル中心からコンソール+クラウド型AIゲーム」へ戦略転換を図るとともに、GPU需要の高まりを取り込む収益モデルを整備します。

Arena出資のストラクチャーと条件

基本合意書によると、Arena社は転換優先株または普通株の第三者割当によって段階的に出資。出資総額は5,000万ドルを上限とし、各トランシェの払込はKPI達成(AIDC稼働率やゲーム開発マイルストン)に連動するパフォーマンス型。株式の希薄化率は最大で約18%と試算され、2025年末までに最終契約締結を目指します。ソース

Golden Gainとの協業で蓄電・データセンターを強化

4月に締結したGolden Gain Inc. Limited との戦略的協力覚書では、国内初の「AIデータセンター×大規模蓄電(BESS)」モデルを共同開発します。再エネ比率の高い電源と組み合わせ、ピーク時30MW規模の電力を確保。これにより、AI学習用GPUの稼働率を年間平均85%以上に維持しつつ、電力コストを最大25%削減する計画です。ソース

ビットコイン準備金戦略も並行推進

7月23日には香港子会社 GPT Pals Studio を通じ、3,000 BTC(時価約350百万ドル、約5,385億円)の長期取得計画を公表。初期1,000万ドルは Integrated Asset Management (Asia) が提供し、残額は調達枠を活用して段階取得します。同社はこれを「AI投資と並行した財務ヘッジ」と位置付け、ドル建て調達リスクや円安時の購買力低下を緩和すると説明しています。ソース

財務インパクトと株式市場の反応

2025年1月発表の第3四半期決算では売上高6.26億円(前年同期比+288.6%)と大幅増収ながら、営業損失3.68億円と先行投資で赤字が続きました。しかし資金調達発表後、株価は1週間で14%上昇し、時価総額は一時200億円台へ。アナリストは「大型調達で自己資本比率の改善とAIインフラの収益寄与が進めば、2027年2月期に黒字転換も視野」と評価しています。ソース

課題:資本効率とガバナンス強化

一方で、金融庁は過去の四半期報告書虚偽記載に対し課徴金納付命令を勧告した経緯があり、開示体制の信頼回復は必須です。また、ビットコイン取得は高ボラティリティ資産ゆえ評価損リスクが常につきまといます。これらを踏まえ、同社は「外部監査法人とのダブルチェック体制」や「デジタル資産の四半期公表」を明言し、ガバナンス面の強化に取り組むとしています。ソース

今後のマイルストン

  1. 2025年12月:第一段階 2MW GPUクラスタ稼働開始
  2. 2026年2月期通期:AIインフラ売上高10億円超を計画
  3. 2026年夏:AAAタイトル「Project Jewel」β版公開
  4. 2027年2月期:営業黒字化とROE 10%台を目指す

これらの目標達成には、今回確保した資金をいかに早期に事業成長へ転換できるかが鍵になります。同社は「技術×コンテンツ×ファイナンス」の三位一体モデルで国内外のAI需要を取り込む方針を示しており、投資家・業界関係者の注目が続きそうです。

記事ライター

石井英治

資金調達アドバイザーとして企業・個人の資金繰りのサポートを行う。モットーは「資金調達は安全で信頼できるサービスを選べ」。業界歴25年。
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